俺様御曹司は逃がさない
「拓人っ!!」
「うぉおっ!!なんだよ急に。びっくりしたぁ~」
ノックもせず、拓人の部屋のドアをバンッ!と勢いよく開けた。開けた後に、『あ、ノックくらいした方が良かったかな……』と少しだけ後悔した。ほんの少しだけど。
ま、もう今更だし、あたしと拓人の仲だし問題はない。当たり前かのように、ズケズケと拓人の部屋へ侵入するあたし。
「拓人!!ねえ、マジでヤバい!!ものすんごくヤバい老人がっ……」
「舞、お前なぁ……俺、着替え中なんすけどぉー」
上半身裸で下半身はパンツ一丁な幼なじみ、佐伯拓人(さえきたくと)が、ジトーーッとした目であたしを見ていた。
あたしもジーーッと拓人の姿を見る……けど、何っとも思わないな。うん、これっぽっちも何も思わない。
幼なじみだし見慣れてるから、『きゃあっ!恥ずかしいっ!』的なノリは一切ない。
「いやんっ。恥ずかしい~!舞のえっちぃ~」
「……いや、恥ずかしいなんて1ミリも思ってないでしょ」
「さぁ?どうでしょ~う」
ニヒッと笑って服を着始めた拓人を横目に、あたしはボフッとベッドに腰かけた。
「てか、聞いてよ!!」
「ん?なんだよ、さっきから興奮して」
あたしの方を向きながら、椅子に座って脚を組んだ拓人。
・・・・ていうか、興奮してるわけじゃないし!!どっちかって言うと、げんなりしてるんですけど!?
「さっき公園でさ、不審者に絡まれてっ……」
「はぁっ!?」