俺様御曹司は逃がさない
・・・・いつものクール執事のようなキャラはどこへやら、めちゃくちゃ焦っている様子。

すると、“しまったぁぁ”と言いたげな顔をして、苦笑いをしている霧島さん。……なんだろう、もう男という生き物が本格的に嫌になってきたかもしんないわ。


「素はこっちなんですね」

「……いや、あの……すみません」

「まあ、いいんじゃないですか?そもそも年下であるあたしなんかに、敬語を使う必要なんてありませんので」

「いえ、そういうわけには……。あの……柊弥様と何かありましたか?」

「いえ」


“勘弁してくれよ、めんどくせーから”的な顔を隠しきれていない霧島さん。それほど九条が面倒くさいってことだろうね。でも、そんなこと知ったこっちゃない。


「七瀬様、どうかこの場に留まってはくれませんか?」

「ごめんなさい」


霧島さんの目を見て謝ると、掴まれていた腕が解放された。


──── あたしはとにかく走った。


何に対してこんなにもイライラしているのか、何に対してこんなにも虚しい気持ちになっているのか分からない。九条に“頑張れよ”って言われたかったから?励まして欲しかったから?


──── あたしは九条に、どんな言葉を求めていたの?

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