俺様御曹司は逃がさない
いや、違う。あたしはきっと、九条に信じて欲しかったのかもしれない。“お前なら余裕でいけるっしょ”……そう思って欲しかったと、心の片隅で思っているのかもしれない。


「……はぁぁ。本当に馬鹿馬鹿しい」


それから走ったり、歩いたりを繰り返して、時間ギリギリセーフで天馬学園に到着したあたし。溜まり場へ行くと、あたし以外の人は集まっていた。もちろん九条もね。


「あなた……柊弥を馬鹿にしているのかしら。サーバントがマスターより遅れてくるなんて、本当信じらんないわ。ま、今日であなたとはお別れだと思うけど。教養も何もかも無いあなたが生き残るには、体力テストでズバ抜けた運動能力や才能を見せるしかないもの。無理でしょ?あなたには」


チラッと九条を見ると、そっぽを向いてあたしを見る気配はない。

・・・・自分からサーバントに誘ったくせに、興味が無くなったら知らん顔ってやつ?ていうか、飽きるの早すぎない?ふざけてんの?あんだけ脅してきたくせに、もうあたしに飽きたって?はは。これだからクズは……嫌い。


「凛……そんな言い方はよさないか。悪いね、舞ちゃん」

「お言葉ですが凛様。我々は毎年恒例のことですし、サーバントには事前に通告があり、この体力テストに向けて体作りをする猶予が与えられています。ですが、七瀬さんはこの試験を昨日把握したばかりです」

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