俺様御曹司は逃がさない
・・・・『頑張ってくださいね』……か。

なんの為に?あたしは何の為に、誰の為に頑張らなくちゃいけないんだろう。

少しうつ向いて、何も言えないあたしの肩に優しくて暖かな手がポンッと置かれた。顔を上げると、不気味なほど悪い顔をした前田先輩がいた。


「ひっっ……」


思わず声が漏れてしまう。


「七瀬さん」

「は、はいっ!!」

「見返すのよ」

「え?」

「悔しいでしょ。凛様にあんな言われ方をして、九条様には""暇潰しのおもちゃ""として扱われて……あなたはそれでもいいのかしら?ただの""おもちゃ""として終わるつもり?」


・・・・沸々と沸き上がってくる何かが、あたしを鼓舞するように全身を巡り始めた。


「外野も含めて結果で黙らせればいい。結果は裏切らないし、揺るぎはしないのだから」


真剣な眼差しであたしの瞳を捉えて離さない前田先輩。“あなたに期待している”……そう言われてるような気がする。


「……確かにあたしは貧乏でド庶民だし、教養の欠片もないような女です……。でも、あいつの""暇潰しおもちゃ""で終わるのは絶っっ対に嫌。あたしのプライドが許さない。だから、見せつけてやります……必ず結果で黙らせる」

「頑張ってね、七瀬さん」

「はい」

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