俺様御曹司は逃がさない
ガンッ!!と勢いよく椅子から立ち上がって、もの凄い形相で近付いてきた拓人は、あたしの両肩をガシッと掴んだ。

力加減というものを忘れているのか、握られた肩が結構痛いんですけどもぉ……。


「ちょ、痛いんだけど」

「あ、悪い」


我に返ったのか、パッと手を離してあたしの前にしゃがみ込んだ拓人。


「何もされてない?」


珍しく真剣な表情をして、心配そうにあたしを見ている。拓人はこういう人なんだよね、いっつもあたしのことを気にかけてくれる。


「されてないよ。ごめんね?心配かけちゃったみたいで……」 


──── それから拓人にあのヤバいおじいちゃんの話をした。


「ねえ、ヤバくない?」

「……」

「おーーい拓人、聞いてる?」

「ん?」

「だから、『孫の嫁に来い』ってヤバくない?」

「ああ……まあ……ヤバいわな、普通に」


どこか上の空状態の拓人に若干イラッとしつつ、ボフッと後ろへ倒れ込んだ。

拓人のベッドって柔らかくてフワフワするから好きなんだよねえ。このベッドで何度寝落ちしたことか……あははーー。


「とりあえず、しばらくあの公園付近に行くのやめようかなぁ」

「まあ、それが無難だろ」

「だよね~」


チラッと拓人の方を見てみると、なにやら険しい顔をして何か考え事をしている様子だった。


「どうしたの?」

「……いや?別に。てか寝んなよ、絶対に」


・・・・あーーあ、釘を刺されてしまった。

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