俺様御曹司は逃がさない
それを、あんな連中に一瞬で奪われてさ……納得できるわけがないでしょ。

ぶっちゃけあたしには関係ないよ?

赤の他人だし、そもそも今出会ったばっかだし?でも、でもさ……こんなの間違ってる。絶対に間違ってるでしょ。


「純君。長くて、できるだけ幅のある太い紐を探して持って来て」

「え?」

「いいからさっさと動く!!」

「えっ、あっ、は、はい!!」


純君は慌てて休憩所から出ていった。


「あ、あの……」

「あたしは七瀬舞」

「舞……ちゃん、あの……」

「あたし、胡桃ちゃんをおぶって持久走やる」

「えぇっ!?」

「あんな卑怯な手を使って、理不尽に落とされるなんて納得いかないでしょ」

「そんなの無理だよ!!それに、舞ちゃんがそこまでする必要がない。そんなことしたら、舞ちゃんまで不合格になっちゃうんだよ!?そんなのダメだよ!!噂で聞いてた……あの九条様のサーバントで、一般家庭からだって……。そんな凄い子、後にも先にも舞ちゃんしか居ないよ!?私なんて、私の代わりなんていくらでも居るけど、舞ちゃんは唯一無二なんだよ!?私なんかの為に、人生を棒に振らないで」


・・・・胡桃ちゃんは優しい子なんだと思う。

この先のことで、不安でいっぱいなはずなのに、あたしのことを第一に考えてくれている。やっぱ、助けたい。助けないわけにはいかない。

< 164 / 193 >

この作品をシェア

pagetop