俺様御曹司は逃がさない
「そういうこと」

「……なるほど。だったら都合がいいですね」

「なに?」

「これで走りきったら、ほぼ確で不合格なんてありえないし、“結果で黙らせる”を実行できそうですし、学力の方も少しは免除してもらえます……よね?」


ニヒッとあたしが笑うと、一瞬目を見開いて困ったような顔をしながら苦笑いをする蓮様。


「舞ちゃん……君には敵わないよ。決して無理はしないでね」


そう言いながら優しく微笑み、あたしの頭を撫でた蓮様に周りが悲鳴を上げたのは言うまでもない。ていうか、蓮様って妙にあたしに優しいっていうか、なんと言うか…………なんでだろう。


「35分以内に10キロを走りきってください。では、開始」


・・・・35分以内ぃぃ!?


「舞ちゃん、やっぱりっ……」

「胡桃ちゃん。一緒に頑張ろうね」

「……っ、ごめんね……っ、ありがとう」


胡桃ちゃんがあたしの背中で泣いているのが伝わってきた。もう見返したいだの何だのとか、ぶっちゃけどうでもいい。

あの痺れ薬を盛った連中みたいなのが、今まで胡桃ちゃん達を邪魔してきたんだと思う。胡桃ちゃんも純君も、色んな障害があって、それを乗り越えてきたんだと思う。

・・・・胡桃ちゃんを応援してあげたい。


──── あたしは、この2人の為に頑張りたい。

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