俺様御曹司は逃がさない
どんだけ遠くても、送迎してくれる人も居なければ、車だって無い。いつだって、何処へ行くにも己の足で歩いて、走って生きてきた。

こんにゃろうが、貧乏人ナメんなっつーの!!!!


・・・・と気合いを入れたものの、1キロあたり3分ちょいで走らなきゃマズいよね。

走りながら既に『キツい』の言葉が出てこない。

タイマーは常に見える位置にある。これも良いんだか悪いんだか分かんないな。しかも、こういう時に限ってめちゃくちゃ天気いいし、日差しも強くて暑い。体力の消耗が激しいなこれ。

胡桃ちゃんはあたしを気遣ってか、何も言わずにいてくれている。正直ありがたい。喋ってる余裕なんて一切ないし、集中力が切れるとヤバい予感しかしない。


一気に全てが崩れそう。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……っ」

「そんな惨めな姿を九条様に見られるなんて、なんて可哀想なのかしら」

「他人のために頑張ってる自分に酔いしれて、気分はどう?」

「それとも善人アピールでもして気を引くつもり?貧乏人って小賢しいわね」


あーー、うるさ。マジでどうでもいいから絡んでこないでほしいわ。勝手に言ってろって感じ。


「純様に纏わり付く女狐さぁん?次のターゲットは九条様ですかぁ?ほ~んと怖い女。大して可愛くもないくせに純様も見る目がないわ」

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