俺様御曹司は逃がさない
「もぉ、ちょっとくらい別にいいじゃん。ケチーー」

「はぁぁ、あのなぁ……舞。マジで気を付けろよ?」

「え、何が?」

「無防備すぎるんだよ。舞はさぁ~」


──── 無防備とは?


いやいや、それは拓人に警戒する必要がないからであって、誰にでも無防備ってわけではない……と思う、うん。


「だって、ここ拓人ん家だから警戒も何もなくない?」

「……あーー、はいはい。うん、そうだな!とりあえず家まで送ってってやるから帰れよ」


椅子から立ち上がって、“ほら、早く行くぞ~”って顔をしている。でも、ぶっちゃけまだ帰りたくないんだよなぁ。

そんなあたしの雰囲気を察してくれたのか、拓人は再び椅子に座って腕を組んだ。


「舞、なんかあった?」

「……まあ、お父さんのクズさに心底嫌気が差してきた」 

「ハハッ!!今更じゃんソレ。湊さんのちゃらんぽらん具合は~」

「はあーー。人の気も知らないでヘラヘラしながら缶ビールを片手に……本当にうざいんだけど。なんとかなんないの?アレ」

「湊さんのことを『アレ』言うな」


まあ、拓人の言う通りなんだよねーー。お父さんのちゃらんぽらん具合なんて、今に始まったことではないし、正直その辺諦めるんだよね。


「他に帰りたくない理由があるんだろ?」


──── 『お前のことなら何でも分かる』そう言われている気がした。これだから拓人には敵わないんだよなぁ……さすがあたしの幼なじみ。

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