俺様御曹司は逃がさない
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……諦めないでっ……あたしを……っ、信じて」

「舞ちゃん……っ、これ以上は危ないよっ……!!」


『危ないよ』……か。まあ、ぶっちゃけ""それな""。


体の感覚が徐々に失われていく。視界も霞んできた。でも……それでもあたしは、絶対に諦めない。諦めたくない。

これはもう、あたしだけの勝負じゃないから──。


「残り1分」


アナウンスの声が歪んで聞こえる。リアルに死ぬかもしんないわ、これ。

・・・・あーー、どうせ死ぬなら絶っっ対にゴールの向こう側で死にたいっ!!!!

謎のプライド、いや、謎のド根性でラストスパートを駆けた。

もう感覚も無ければ、視界もボヤけて何も見えない。でも、この先にゴールはある。それだけはハッキリと分かる。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……っ!!!!」


──── 届けっ!!!!

 
ピーーーーッ!!

終了のホイッスルが鳴った。

あたしは……あたし達はゴールできたのかな……?どうなったんだろ、もう分かんないや。


「舞ちゃん……っ、舞ちゃんスゴいよっ、本当にゴールしちゃうんだもん……っ。ありがとう、ありがとね……っ、舞ちゃん」

< 173 / 193 >

この作品をシェア

pagetop