俺様御曹司は逃がさない
・・・・ああ、よかったぁぁ……と安堵すると同時に体が砕け散りそうで、胡桃ちゃんを降ろさないとヤバい……としか考えられなかった。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……胡桃ちゃん、ごめん……っ、降りれる?」

「あっ、うん!!」


紐をほどいて胡桃ちゃんが降りた瞬間、フワッと前へ倒れ込んだ。妙にスローモーションになって、脳裏に浮かんできたのは何故か九条だった。

・・・・こんだけ頑張ったサーバントを褒めないマスターはいないでしょ、多分。

『根性なし』『期待ハズレ』……なんてもう絶っっ対に言わせないから。


──── ていうか、このまま地面に倒れ込んだら顔面強打は免れない。でも、もう受け身を取る力すら1ミリも残っていない。


頼む、あたしの顔面崩壊が軽く済みますように──。この可もなく不可もなく的な顔に大きな傷なんて作ったら、それこそ本当に貰い手がいなくなっちゃう……あ、でも拓人なら“気にしないけど?”とか言いそう。

九条は……どうだろう。“いらない”って言うのかな……?少しだけ、ほんの少しだけズキッと心が痛んだ。


「舞ちゃんっ!!!!!!」


──── 胡桃ちゃんの叫び声と共に、あたしは意識を失った。

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