俺様御曹司は逃がさない
「お母さんがさぁ、結構気にしてるっぽいんだよねぇ」

「あーー、定時制の件?」

「そうそう。まあ、正直言うと普通の高校生生活が送れるならそうしたいけど、どう考えてもうちは無理だし、定時制行けるだけマシじゃない?っていうかさ……」


チラッと拓人を見ると、うつ向いて肩を震わせていた。

・・・・え、ちょっ……もしかして、泣いてる!?さすがの拓人もあたしが“可哀想な子”に思えてきちゃった!?


「いやっ、あのっ、別に悲しいとかそういうことじゃなっ……」

「舞、お前が売れ残ったら俺が嫁にもらってやるから安心しろよ。七瀬家ごと面倒みてやっからさ……」


──── 拓人。


「ねえ、あんた。笑ってるでしょ」

「あ、バレた?」


満面の笑みを浮かべながら顔を上げてあたしを見ている拓人。うん、拓人はこういう人間だったわ。あたしのことを哀れんだり、可哀想な子扱いをするタイプではない。


「なんか悩んでたのが馬鹿らしくなってきたわ。帰る」

「ハハッ。送ってくよ」


徒歩10分程度の距離を毎回わざわざ送ってくれる拓人って、結構優しいっていうかイケてるメンズだよね?普通に考えたら。

身長はそこそこで見た目も割とカッコいいし、勉強も運動もそれなりに出来るタイプで、ノリもよくて人気者の部類。なのに、浮いた話を聞いたことがない。今までかつて一度も。

んーー。なんで彼女とか作らないんだろ?拓人ってモテるのに。

好きな人がいる……とか?いや、でもそんな話も聞いたことがないしな。

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