俺様御曹司は逃がさない
「……へ?あっ、い、いやっ、そんなっ!!滅相もございません!!」

「ハハッ、もう下がっていいよ~。こいつは俺が見とくし~」

「はっ、はい!!」


・・・・にしても、死んだように寝てんな。本当に生きてんのか?

そんなことを思いながら、俺の手は自然と七瀬へ伸びていき、気づいた時には髪を撫でていた。


「……お前、本当に馬鹿じゃねえの」


こうなったのは、こうさせてしまったのは全部……俺のせいだ。

お前があの時、俺のサーバントで在ることをあっさり諦めて、辞めようとして……平然とした面をしてたのがどうしても気に入らなくて、許せなかった。

お前の口から何も聞きたくなった、受け入れたくなかった。

『根性なし』『期待ハズレ』そう言った時、七瀬は一瞬だけ表情を曇らせた。ほんの一瞬、傷付いたような顔をして、悲しそうにしたのを俺は見逃さなかった。

言った後に後悔した……あんなことを言いたかったわけじゃねえ。

確実に言い過ぎてる、謝ってやってもいい。そうは思っても、七瀬が俺のことなんてどうでもいい……さっさとサーバントなんて辞めたい……そう思っている事実を俺は認めたくなくて、認めきれなくて、その事実にどうしようもなく苛立って……お前を傷つけた。

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