俺様御曹司は逃がさない
あん時、いつも通り不機嫌そうに俺を睨み付けて、俺の発言も何かもかもが気に入らない……そんなような顔をしてたな。

・・・・思い通りにいきそうにないこの現実に、どうしても逃がしたくない“おもちゃ”に、振り回されっぱなしの俺。

こんな感情が初めてで、こんなにも何かに執着すんのも初めてで、何がなんだかよく分かんねーし、胸の辺がモヤモヤして気持ち悪ぃ。


「なあ、七瀬……。悪かったな」


ほんっと滅茶苦茶にも程があんだろ、馬鹿馬鹿しい。

・・・・でも、その“滅茶苦茶”をした理由の一部に、“俺のサーバントで在りたい”という気持ちが少しでも、ほんの少しでもあったのなら……こいつを褒めてやらねえとな。

七瀬の綺麗な頬を親指でなぞり、その指を下に滑らせて唇に触れた。あたたかくて、柔らかくて、形のいい唇。


「ちっせぇ口」

 
・・・・今だったら、こいつの唇に……って、おいおい。なに考えてんだ俺は。

椅子から立ち上がって、病室の窓から外を眺めては七瀬をチラッと確認してを何度も繰り返した。

今日はおそらく目を覚まさないだろう……と医者は言っていたが、どうしても七瀬が気になって仕方ない。

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