俺様御曹司は逃がさない
ちゃんと息をしているか、七瀬の鼻付近に手をかざして確認したり、落ち着きなく病室内をうろちょろして、いよいよ俺もイカれたらしいな。

マジでどうかしてるわ。

今の俺の行動を客観視すると、めちゃくちゃダセェし恥ずいわ。こんなの霧島に見られたら……見られたら──。

嫌な予感がしてドアの方へ視線をやると、微妙に開いているドアの隙間から、こちらを覗き込んでいる奴がいた。

普段なら人の気配に気づかない……なーんてことはほぼ無いが、今は状況が違うらしい。全く気づけなかったわ……最悪なパターンな、これ。

大きなため息をついてドアを開けると……すんげえ鬱陶しい顔をしながら、荷物を持っている霧島が突っ立っていた。


「柊弥様、随分と落ち着きがないようで……いや、随分と余裕がないと言うべきか」

「チッ、うっせぇー」

「くくっ。お荷物をお持ちいたしました。私も院内には居ますので、何かあれば何なりとお申し付けください。七瀬様の寝込みを襲う……なんてことはくれぐれも無きように。では、失礼いたします」

「おい霧島、おまっ……」


ビュンッと光の速さで消えた霧島。ったく、逃げ足だけは速ぇな。だいたい、こんな状態の女を襲うほど飢えてねえっつーの。

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