俺様御曹司は逃がさない
・・・・いや、愛おしいって……そもそもなんだ?大事?可愛い?かわいそうで気の毒?……うん、さっぱり分からん。

何かを愛でたりしたことねーし、猫だの犬だの見ても“愛おしい”なーーんて思ったこともねえしな。

愛おしい……愛おしい……ねえ。

でも、まあ……あれじゃね?こいつは“俺の"大事"な最高のおもちゃ”……に格が上がったっつーことじゃね? 多分。愛おしいってそういうことだろ?おそらく。

だいたいこんな滅茶苦茶な女、他を探してもそうそう居ないっしょ。俺のおもちゃとして、俺のサーバントとして悪くはないし、もはや適正あんだろとすら思う。

やっぱこいつしか居ねえわって思い知らされた……そして、確信を得た。

絶対に逃がしたくねえ、こいつだけは。

他のモンはどうだっていい。なんだってくれてやるよ……でも、こいつだけは何がなんでも譲らねえし、奪わせねえ──。

──── 七瀬舞。


俺に出会えて良かった、俺のサーバントで良かったって……死ぬほどそう思わせてやるよ。

後悔なんてさせねえ……だから、俺から離れんな。俺の傍に居ろ。

お前は、俺だけを見ていればいい。


「ハッ、なぁに言ってんだか……」

 
柄でもねえ、アホらしい……そう思いながらも七瀬のほっそい指を撫でて、なぞって、『綺麗な手ぇしてんなぁーー』なんて思ったりして、そっと優しく手を握る。


──── 俺は七瀬の手を握りなら、いつの間にか眠りに就いていた。

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