俺様御曹司は逃がさない


──── 手があたたかい。


徐々に意識がハッキリしてきて、全身が何かに押し潰されているかのように重く、何よりそこらじゅうが痛すぎて死にそう。開きづらい目蓋をゆっくりと開けて、視界に入ったのは天井と点滴だった。

この手の温もりの正体を知りたい、知りたいけど……いっっっったぁぁい!!!!

ちょっとでも首を動かそうもんなら激痛が走る。今までの人生で、こんなにも強烈な痛みを感じたことはない。

あたし、筋肉痛で死ぬの……?いや、それは笑えない、マジで笑えない。

ていうか、全身が死ぬほど痛すぎて涙がちょちょぎれる。高校生にもなって筋肉痛で泣くとか、恥ずかしすぎて黒歴史確定演出なんですけど。

でもさ?疲労骨折とかしてないだけ凄くない?いや、疲労骨折している可能性は大なんだけど、おそらくしてない気がするのよ。

こんな頑丈な体に産んで、育ててくれたお母さんとお父さんには感謝だな。お金じゃ決して手に入れられない鋼の肉体を持ったよ、あなた達の娘は。


──── あたしの走っている姿を見て、九条はどう思ったのかな。ま、所詮はド庶民のサーバント……なんとも思わないか。


「……うぅっ、痛いぃぃ」

 
とにかく、あたしの手を優しく握ってくれている人の正体を知りたい。

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