俺様御曹司は逃がさない
大きくてゴツゴツした手。この手のおかげで安心して、ぐっすり眠れていたような気がする。


「いっ、いぃぃたたたたたぁぁ……」

 
死に物狂いで首を動かして、手を握られている方を向いた。


──── え?


あたしの手を握り、ベッドに顔を伏せて寝ていたのは……九条だった。あまりの衝撃的事実に、あたしは目を見開いて九条をガン見することしかできない。

・・・・あの、あの九条が……!?あの九条があたしの手を握って、添い寝(?)しているだとぉぉ!?信じらんない。そんなことをするような男ではないはず。これは……“地球滅亡の危機”!!

あの九条がこんなことをするなんて、この世の終わりが来るに決まっている!!さあ、みんな逃げろ!!何処かへ!!

・・・・って、んなバカな。落ち着きなさいよ、あたし。


「……なによ。柄にもないことしちゃって……馬鹿じゃないの?」

 
そんなことを言いながら、あたしの顔はきっと緩んでいるんだろうな……。

すると、ムクッと顔を上げて目を開けた九条と目がバチッ!と合った──。


「……」

「……」

 
ただ見つめ合って、沈黙がつづく……と思ったら、勢い良くあたしの手をポイッ!と捨てるように離した九条。もちろん体に死ぬほど激痛が走るあたし。

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