俺様御曹司は逃がさない
──── 家までの大した距離でもない見慣れた道を歩くあたしと拓人。


「ねえ、拓人」

「ん?」

「拓人って彼女いる?」

「……はい?」


隣にいる拓人をチラッと見上げると、めちゃくちゃ真顔になっている拓人と目が合った。


「あたしが知らないだけで彼女が居たり……なんてことは……?」

「……は?いや、彼女なんて居たら舞には言うでしょ」

「ということは……?」

「居ませーーん」


・・・・よかったぁぁ……と謎に安心するあたし。だってさ、拓人に彼女がいたら、さすがに今の距離感ではいられないでしょ?

“嫌な幼なじみの女”的なレッテル貼られるのも嫌だし。……まあ、中学を卒業して高校へ行き始めたら、さすがに彼女のひとりやふたりは出来るよね。

うーーん……いい加減あたしも拓人離れしなきゃいけないのかなぁーー。


「送ってくれてありがとう。じゃあね」


家の中に入ろうと玄関の取っ手に触れた時、後ろからギュッと腕を掴まれた。いきなりだったから、かなりびっくりしてビクッ!と体が跳ね上がる。


「ひっ……!?ちょ、いきなり何!?もぉ、びっくりしたなぁ」


腕を掴んだのはもちろん拓人。


「あ、ああ……悪い悪い。……あのさ、あの話。別に冗談ってわけでもないから」


・・・・えっと……『あの話』とは?


「あの話って?」

「万が一、舞が貰い手見つかんなかったら、俺が貰ってやってもいいよって話」

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