俺様御曹司は逃がさない
椅子に座って脚を組み、あたしをジーッと見てくる九条。……多分、なんで胡桃ちゃんを背負って走ることになったんだ……とか理由を聞かれるに違いない。


「お前、滅茶苦茶すぎんだろ。馬鹿じゃねーの?」

「……は?」

「マジでありえねえ。ほーーんと信じらんねぇわ、アホくさ」

・・・・なにそれ。それが頑張ったサーバントに向かって言うセリフ?そりゃ九条の為に頑張ったわけでもないし?別に褒められる筋合いもないけど……ないけどさ。さすがにその言葉はキツい。


「……っ、ああそう。もうっ……」

「なんで俺に助けを求めなかったわけ?」

「……へ?」


真剣な表情で、怒っているわけでもなければ、おちゃらけている様子もない。


「ありえねえだろ、女が女を背負って走るとか。どう考えても無謀すぎ。滅茶苦茶だっつってんの」

「あれは……あたしがあの子にっ……」

「『あの子に怪我をさせちゃったから、その責任を……』だろ?そんな嘘、俺に通用するとでも思うか?」

「いや、嘘って言うか……」

「背負ってた女とそのマスターに事情は聞いた。だから、なんで俺に助けを求めなかったって聞いてんだよ」


あたしから目を逸らすことなく、あたしの瞳を捉えて離そうとしない。必然的に目を逸らすことができなくなる。

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