俺様御曹司は逃がさない
助けを求めなかったんじゃない。

助けを求めるっていう選択肢が、あたしの中になかっただけ。

それに、あの状況で助けを求めたとして、それが正解で正しい判断だったと言えるのかな?“結局は九条のおかげ”……その言葉がずっと纏わり付いてくる。そんなのあたしは嫌。絶対に嫌だ。


「お前は俺のサーバントで、俺はお前のマスターだろ。頼れよ、少しくらい。こんなボロボロになってさ、馬っ鹿じゃねえの?」

「…………少しくらい褒めなさいよ」

「あ?」

「少しくらい労りの言葉ってもんがあってもいいんじゃないでしょうか?と言っているんですー。いつもみたいに偉そうに『ま、俺のサーバントだからな。こんくらいできて当たり前だろ?』とか『まぁまぁ頑張ったんじゃねーの?』とかなんかあんでしょ、普通は~」


ふざけたようにそう言うと、おもむろに立ち上がった九条があたしに向かって手を伸ばしてきた。ピタッと頬に大きな手が添えられる。目を細めながら、あたしの顔を覗き込んできた。


・・・・ちょちょちょちょっ……!! 


これはさすがに少女漫画チックな展開なんじゃないの!?


「……っ、あ、あっ、あの!!」


体は痛すぎて動かせないし、どうしたらいいの!?


「あんな姿見せられたらさ、ますます手離せなくなんだろ。もう逃がしてやんねえから」

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