俺様御曹司は逃がさない
ゆっくり近付いてくる九条の無駄に整った御尊顔。


「ちょっ、ちょっと!!待って!!」


目をギュッと瞑って、唇に来るであろう衝撃に備えた。あたしのファーストキス……あたしのファーストキスが、こんな俺様御曹司に奪われちゃうのぉぉ!?

・・・・ん?

ん?

ん??

何も……何も唇に触れない。ゆっくり目蓋を上げると、ニヤニヤしている九条が視界に入った。


「お前、なに期待してんの?」

「はっ、はあ!?べっ、別に期待なんかしてませんけど!?」

「ふーーん?ま、何でもいいけど~」


そう言ってあたしから離れると、ポケットに手を突っ込んで見下ろしてくる九条。


「お前みたいなバカ頑丈なおもちゃはそうそう居ない。俺の為に、俺だけの為に、馬車馬のように働け」


不敵な笑みを浮かべながら、クズ発言をするお坊っちゃま。


「……っ、あんたねえっ……」

「お前ならそう簡単には壊れないっしょ」

「は?なにを言ってっ……」

「壊れんなよ」

「……?なにそれ、どういう意味?」


意味深な表情をしながら、あたしに背を向けて歩き始めた。


「お前は俺のモンでしょ?だから、俺の許可なく勝手に壊れんなってこと」


・・・・いや、マジで意味分かんないんですけど。そして、九条は何処かへ行ってしまった。


「……暇潰しの“おもちゃ”は馬車馬のように働いて、勝手に体調を崩すなよってこと……?」


──── はあ?


滅茶苦茶なのはあんたでしょうがぁぁーー!!

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