俺様御曹司は逃がさない
「…………アリガトウゴザイマス」

「フッ、よろしい」


勝ち誇った顔をしている九条が憎たらしくて仕方ない。


「つーか、お前」


なんの前触れもなく、相変わらずの距離感バグで近付いてきた九条。


「……っ、来ないで!!」


思わず大きな声を出して、九条を突っぱねてしまった。九条はビクともせず、押した張本人であるあたしがよろけて尻餅を付く。


「お前、なんだよ急に。びっくりしたぁ……ったく、なぁにしてんだか。ほれ、立てるか?」


あたしに両手を伸ばして、抱えようとしてくる九条。


「触んないで!!」

「……は?さっきから何なの、お前」


呆れてるっていうか、若干怒ってるっていうか……そんな九条と目も合わせたくなくて、ただうつ向いた。


「ひとりで立てるから……」

「んな無理すんなって~」

「無理なんてしてない」

「普通に痛ぇんだろ?だったらっ……」

「だから!!別に大丈夫だっ……」

「おい、お前……いい加減にしとけよ」


九条の低い声に体がピクッと少しだけ反応する。


「俺に触られんのがそんなにも嫌なのかよ。蓮だったらいいわけ?上杉だったらいいわけ?あの幼馴染みだったらいいのかよ」


そう言い捨てて荒々しく部屋から出ていった。

< 197 / 234 >

この作品をシェア

pagetop