俺様御曹司は逃がさない
──── 違う、そうじゃない。ただ汚いから触れて欲しくなかっただけ。臭いとか思われたくないじゃん?乙女心ってやつじゃん。なんで分かってくんないの?

・・・・ま、綺麗でも触れて欲しくはないけどさ。

あたしは床に座り込んだまま、その場にうずくまっていた。すると、ひょこっと律が顔を覗き込んできて、不思議そうな顔をしていた。


「なにしてんの、舞」

「別に。立ち上がれないから手伝って」


律に持ち上げてもらってベッドに腰かけた。


「あ、さっき九条さんとすれ違ったよ」

「……そっか」

「はい、これ。舞の好きな苺」

「はぁぁ。だからさぁ、来るたびにフルーツ買って来るのやめないよ。もったいない……」

「まぁ、いいじゃん。俺の小遣いなんだし」


苺を洗ってあたしに差し出してきた律。


「ありがとう」

「いやぁ~、人の不幸を見ながら食べる苺は格別ですな」


あたしに差し出してきた苺を次々と頬張っていく律。

・・・・お前、マジで何しに来たのよ。

結局、ほぼ律が食べて終わった。まあ、律のお金だからいいんだけどね?


「九条さんと喧嘩でもした?」

「……別に」

「へえーー。ま、興味もないし、どうでもいいけど」


じゃあ聞くなよ。


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