俺様御曹司は逃がさない
「もう帰る」

「ああ、うん。ありがとね」


・・・・いや、ありがとうってなに?お礼を言わなきゃいけないほど律は何かをしただろうか……。いちご食べに来ただけじゃん。あたしの不幸をおかずに、白米を食べに来たみたいなもんじゃん。


「あ、拓人君が『舞に会いたぁい』って嘆いてたよ」

「なにそれ、気持ち悪い」

「はは。そう伝えておくねー」

「いや、ちょっ……!!」


律は足早に病室を出ていった。


「……あーーもう、寝よ」


──── 結局、その日から九条がこの病室に訪れることはなかった。


「七瀬さん、お疲れ様でした」

「舞ちゃん、退院おめでとう」

「七瀬さん……本当にありがとう」

「舞ちゃん……っ、舞ちゃんごめんねっ」

「前田先輩、蓮様……わざわざありがとうございます。純君、胡桃ちゃん……余計な心配かけちゃってごめんね?ほら、もうあたしはバリバリ元気だから」


こうしてあたしは約2週間の入院を経て、無事退院を迎えた。


「……あの、九条様は?」

「ああ、うん……。最近柊弥のやつ機嫌悪くってさ。ごめんね?」

「いえ、そんな……蓮様が謝ることではありません」

「七瀬さん。ちょっとよろしいですか?」

「え、あ、はい」

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