俺様御曹司は逃がさない
あの出来事が、あたしの人生を大きく変えることになるとは思ってもみなかった──。
あたし、七瀬舞(ななせまい)はごくごく普通の女子中学生で、見た目も何もかも可もなく不可もなくって感じの、要は“平凡な女”ってやつ。
まあ、良くも悪くも“女の子らしさ”は皆無に等しい。
“彼氏いない歴=年齢”……的なよくあるパターンのやつで、まぁ別に焦りもなければ“無性に彼氏が欲しい!!”みたいなタイプでもないし、欲もない。
何度か告白されたこともあったけど、常にちゃらんぽらんな男を間近で見ているせいか、男という生き物はもれなく全員ちゃらんぽらんなんじゃないかって、そう思い始めている。だから、あまり彼氏が欲しいとは思えない。
さて、皆さん。薄々お気付きでしょう。
あたしはピッチピチの女子中学生にも関わらず、若干男嫌いになりつつある“可哀想な女”……だということを。あ、ちなみに身近にいる“ちゃらんぽらんな男”ってのは、あたしのお父さんのことね?
別にお父さんと仲が悪いとか、いざこざがあって~とか、そういうこでは一切ないからご安心を。ただ、お父さんみたいな人とは絶っっ対に付き合いたくもないし、結婚もしたくないなーって思ってるだけ。ただ、それだけ。
──── 中3の夏。
暑い中、いつも通りスーパーをハシゴしていた──ほんの少しでも安い物を求めて。
この際だからはっきり言っちゃおう。うちは“クソ貧乏”です。今にも崩れて壊れちゃいそうなボロい借家の一軒家に住んでいる。とはいえ、暗~い貧乏では決してない。