俺様御曹司は逃がさない
前田先輩に呼ばれて、一緒に病室を出た。


「佐伯拓人……という男性はご存知でしょうか?」
 
「え?拓人?……あ、はい。あたしの幼馴染みです」

「今外で待っていますよ。おそらく病室へ入れさせてもらえなかったんでしょうね」

「は、はあ……」


なんでだろう?病室に入れないって……どういうこと?


「九条様も蓮様も今、彼が居るということは知りません。面倒なことになる前に、少し会って話してきたらどうですか?私が時間を稼ぎますので」

「……?わ、分かりました」 

「ちなみにあの方は……ただの幼なじみでご友人……という解釈でよろしいでしょうか?」

「あ、はい」

「なら、行ってください」


あたしは前田先輩に頭を下げて、拓人のもとへ向かった。


「拓人」


あたしがそう呼ぶと、バッと勢い良く振り向いてあたしを見るなりダッシュしてきたと思ったら……思いっきり抱き締められた。


「いっったぁぁいっ!!!!」

「あ、ごめんごめん!!マジでごめん!!」


テンパってジタバタしている拓人。その姿が面白くて面白くて、大笑い……したいけど、まだ痛むからクスクス笑った。


「ありがとう、拓人。心配かけてごめんね?」

「……舞」 

「ん?」

「もう天馬なんて辞めちゃえよ」

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