俺様御曹司は逃がさない
あたしと拓人の間に、微妙な空気が流れて気まずい。


「入院するほどの出来事ってなに?おかしいじゃん、どう考えても。ねえ、舞……やっぱあの男に騙されて、良いように使われてるだけなんじゃないの?俺、心配なんだけど」


・・・・“そんなんじゃない!!”と、全否定できないから恐ろしいよね、あの男のことは。


「……そんなことないよ?まあ、確かにお金持ち学校だからアウェイ感半端ないけど……それでも、あたしに良くしてくれる先輩も、普通に接してくれる同学年の子達も居るから」

「舞はいつだってそうだよな」

「え?」

「いや、こっちの話。いつか本当のこと話してくれよ……友達だろ?俺達」


寂しそうに笑っている拓人に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。でも、九条のサーバント……なんて言えないや。話がとんでもなくややこしくなるから。

去っていく拓人の後ろ姿をしばらく眺めた。あんな寂しそうな後ろ姿、はじめて見たな──。


「な~に見てるの?舞ちゃん」

「ひっ!?」


驚きながら振り向くと、そこにいたのは蓮様だった。


「ごめんね?驚かすつもりはなかったんだけど」

「あ、いえ……すみません」

「ねえ、舞ちゃん」

「はい」

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