俺様御曹司は逃がさない
ニコッと優しく微笑んで、妙に色っぽい雰囲気が漂わせている蓮様。この人も相当おモテになるんだろうなぁ。九条みたいな暴君さは一切感じないし、ルックスも抜群。そして、家柄も申し分無い……ということは、九条よりモテるんじゃないかな?


「僕のサーバントにならないか?」

「…………はい?」

「ん?」

「え?」


周りの雑音が消え、シーーンッと静まり返る。『僕のサーバントにならないか?』……って、え?ええ? ど、どういうこと?


「柊弥のサーバントなんて辞めて、僕のところにおいでよ。君を“物”みたいに扱ったりはしない。僕さ、舞ちゃんのことが気になってるんだよね。純粋に気に入ったんだ、君のこと。ちなみにサーバントは“ひとりだけ”って規則はないから、前田さんをクビに……とか、そういうことはないから安心して?」


“逃がさない”と言わんばかりに、あたしの瞳を見つめてくる蓮様。

・・・・蓮様のサーバントになったほうが絶対いいに決まってる。九条みたいな扱いを受けることもないだろうし。

──── でも……。


「すみません。お断りします」

「え?」


あたしは蓮様の瞳から一切目を逸らすことなくそう言うと、蓮様が呆気に取られたような顔をしている。

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