俺様御曹司は逃がさない
・・・・いや、なにが?

拗ねたような声で、ゴニョゴニョと喋っている九条。


「あの、質問のいとが意図がさっぱり分かりませんけど」

「……お前、他の奴とは楽しそうに喋るのに、俺には死んだ魚みてぇな目しかしねーじゃん。挙げ句、俺が触ろうとしたら『触んないで!!』だろ?」

「いや、あれは……」


“臭いかもしれないから近寄って欲しくなかった”……なーんて言いたくないなぁ。でも、言わなきゃ永遠にネチネチグチグチと言われるのかぁ……いや、無理ダルい。


「ごめんなさい。あれはそのぉ……ちょっとした乙女心ってヤツなので、察してくれると助かります」

「は?なんだそれ、くだらねえ。そうやって言っとけば、俺が納得するともでも思ってんの?」


納得するわけがないわな、うん。分かってるよ、そんなことは。


「はぁぁーー。お風呂入ってなかったから気になるでしょ」

「あ?なにが?」

「……匂いとか」

「は?」

「だから、お風呂入ってなかったから、匂いとか気にするでしょ?普通!!」

「なんっっだそれ、そんなことかよ。マジでくだらねえじゃん」


ムクッと起き上がった九条は、呆れたような顔をしてあたしを見ている。

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