俺様御曹司は逃がさない
「入りたくなくても、入らされるこっちの身にもなってくれないかしら。1ミリも光栄だなんて思えないんですけど」

「ハッ。お前みたいな女子力の欠片もないような、ド庶民の貧乏人には俺という存在の価値が理解できないらしい」

「理解したくもないわ」


ていうか、いい加減離してくれないだろうか。看病に来ただけなのに、なんであたしは病人に布団の中で抱き締められているんだろう。しかも無駄に長い脚であたしの脚をロックしてやがる……。

「あの、九条様っ……」

「お前しばらく布団の中に居ろ」

「はあ?お断りっ……」

「寒ぃんだよ、湯タンポになれ」

「だったら湯タンポで宜しいかと」


コンコンッ。

ノック音がして、霧島さんの存在を思い出した。そういえば、飲み物を買って来るように頼んでたんだった。

・・・・ヤバいのでは……?こんなところを見られたらヤバいのでは……!?ふたりで布団の中に潜ってるなんて……どう考えても怪しすぎるじゃん!!


「九条っ、九条ってば!!霧島さん、霧島さんがっ……!!」

「失礼いたします」


ガチャッとドアが開く音が聞こえた。


・・・・ああ……終わった。


「霧島、それ以上近付いたら殺す」

「はい…………はい?」

「飲み物置いてさっさと出てけ」

「え、あ、はい。……えっと、七瀬様は?」

「便所じゃね~?」

「そうですか。では、失礼いたします」


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