俺様御曹司は逃がさない
ドスンッとソファーに座って九条から顔を逸らした。これ以上イライラさせられたら、本当に手が出かねない。あたしをイライラさせるのがお得意天才児は、大きなため息をついて薬を飲むと寝っ転がった。


「お前が居るとイライラして熱が上がるわ。さっさと帰れ、じゃーな」

「……そうですか。では、失礼いたします」


ソファーから立ち上がって、チラッと九条を見てみたけど、あたしに背を向けているから何も見えない。ま、帰れって言われてるし、特にしてあげれることもないから天馬に戻ろ。部屋から出て、長い廊下を歩き玄関に向かう。

靴を履いて、ドアノブに手をかけた時だった──。


「七瀬様!!」

「あ、霧島さん。お邪魔しまっ……」

「どちらへ!?」

「……どちらへって、天馬へ戻ろうかと」

「七瀬様、一生のお願いです。柊弥様の体調が良くなるまで、どうかこの屋敷に留まってはくれませんか?」


・・・・イコール“泊まってくれ”ということ?……いや、いやいやいや!!無理無理!!絶っ対にムリ!!

九条の家に泊まるなんて危険すぎるし、なにより嫌すぎる。


「いや、霧島さん。さすがに年頃の男女が一つ屋根の下っていうのは如何なものかと。それにうちの両親がそんなこと許さっ……」

「既に許可は取ってあります。快く承諾していただきました。着替えも準備してありますので」


ニコッと微笑んでいる霧島さんから、“泊まれよ、泊まらないという選択肢なんて貴様にはこれっぽっちもねえぞ?”という、ただならぬプレッシャーをひしひしと感じる。


「……は、はい」


・・・・あーーもうっ!!なんなの!?こんなの、一難去ってまた一難すぎるでしょ!!!!

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