俺様御曹司は逃がさない
霧島さんの圧力に屈してしまったあたしは、九条家にお泊まりするはめになりました──。
「霧島さん」
「はい。なんでしょう」
「あの、九条様の親さんにご挨拶をしたほうがっ……」
「いえ、その必要はありません」
「いや、でも……挨拶無しで勝手に泊まるのはっ……」
「柊弥様のことに関しては、この私にも権限がありますので私が“いい”と言えば良いのです」
・・・・へえーー。
でも、なんか気まずいなぁ。悪いことをしているみたいで気が引ける。でも、九条のことを任せられている霧島さんがいいって言ってるんだから、良いってことか……と自分に言い聞かせることにした。
「というか、あたしが居ることを九条が嫌がると思うんですけど……いいんですか?さっきも『さっさと帰れ』とか言われましたし。あたしが居ないほうが本人も心穏やかにっ……」
「ないです」
「え?」
「ありえませんね」
「はい?」
大きなため息を吐いて、髪をかき上げた霧島さん。
・・・・言わずもがな、霧島さんもかなりルックスがいい。
「自覚してください。あなたは柊弥様の“特別”だということを」
“特別”……特別ねえ。あいつからしたらあたしなんて、都合の良い暇潰しの“おもちゃ”にすぎない。こんなにも貧乏なド庶民が珍しかったんだろうね。ほら、あいつの周りには絶対に居ないタイプでしょ?あたし。