俺様御曹司は逃がさない
椅子をベッド横に持ってきて座り、苦しそうにしている九条の前髪をわけて、汗を拭いたり、冷えピタや氷枕を代えたりした。薬が効いてきたのか一時的に熱が引いて、九条も少しだけ楽そうに呼吸をしている。


「ちょっと換気でもしようかな」


立ち上がって少しだけ窓を開けた。今日は陽気が良い。あたたかくて心地良い風が入ってくる。

あたしは椅子を持って窓際に座った。しばらくすると、窓際があまりにも心地よすぎて睡魔に襲われる。これは寝落ちしちゃうな……そう思い、ちょっとした好奇心からあたしは霧島さんにバレないよう外へ出て、敷地内を少しだけ探索することにした。

・・・・それにしても、隅々まで綺麗に整備されてる庭だなあ。

大きな池には優雅に泳いでいる鯉達。

九条家は洋風の大きな家ではなく、がっつり和風の大きな家。

ぶっちゃけ、“日本を統一している超有名な極道一家ですか?”的な雰囲気が漂っている。分かるかな?そういう雰囲気。とにかく異次元、とにかく規格外。何百、いや、何千坪あるんだろう、ここは。

少し奥に行くとカラフルなツツジがたくさん咲いていて、それを眺めている女の人が居る。あたしの気配に気づいたのかゆっくりと振り向いた。

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