俺様御曹司は逃がさない
「モテ期でもなければ美人でもない!!」


明らかに不審者な老人と、これまた明らかに不審者な若者にさ、立て続けに絡まれることって普通ある?無いよね?あたしって不運すぎない!?貧乏ってもれなく不運が付き物なの!?


「あれ。てかさ、拓人は?」

「え?拓人?知らない。毎日一緒に登下校してるわけでもないし」

「大概いっつも一緒じゃん」

「拓人君と舞ちゃんって付き合ってないのが本当に不思議だよね~」


え、拓人とあたしが付き合う……?いやいや、ナイナイありえない。あたしと拓人はただの幼なじみだし、そもそも幼なじみ通り越してただの家族(七瀬家の一員)になりかけてる男だよ?


「お、噂をすれば……」


梨花の視線の先にいたのは……寝癖がつきまくの拓人だった。寝癖を直す暇がなかったほどの寝坊をカマしたのか、何かに慌てて急いで来たのか……それにしても、素晴らしい寝癖だな。


「拓人君、今日は斬新な髪型にしてきたね~」


『すごぉい』とか言いながら控えめに拍手をしている美玖。さらっとディスる能力が高めな美玖はあなどれない。

そんな寝癖つきまくり拓人とあたしの目が合った。


「舞っ……」


あたしに何かを言いかけた拓人は、男子数人に絡まれて身動きが取れなくなっている。揉みクシャにされまくって、ようやくあたしの方へ来た。


「悪い。今朝寝坊した」

「え?あ、うん。そっか」

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