俺様御曹司は逃がさない
・・・・正門に居るってことは、裏門から逃げれば問題ないってことだよね。

念のため、辺りをキョロキョロ見渡しながら警戒を怠らず、裏門までたどり着いた。人の気配もないし、問題はない。


「よし、あたしの勝ちっ……」


──── って、え?……うえぇえ!!??


裏門から出た瞬間、どっからともなく現れた真っ黒なスーツに身を包んだ大人達がズラッと並ぶ。某テレビ番組……スーツを着た人から逃げるやつ、あれに出てきそうな大人達が綺麗に並んでいる。ハンター、いや、SP的な?

いや、もはやハンターだろうがSPだろうが、どっちでもいいしどうでもいい。この人達は一体なんなの!?


「こちら裏門。対象者と────」


インカムか何かで連絡取り合ってるっぽい……。これ、マジでただ事じゃないし、あの男もただ者ではない気がしてきた。もしかして……あっち系の息子とか孫みたいな感じ?いやいや、そもそもあたしがヤクザに狙われる理由がないじゃん。意味分かんないし。

・・・・まさか、あんのクズ(父)が莫大な借金でもしたとか?で、娘のあたしが売り飛ばされる的な?臓器を売る、もしくは……体を売る……。


──── ありえる。冗談抜きでありえるから尚更こわい。


想像するだけで寒気が止まらない。これは何としてでも逃げなくちゃ……とは言うものの、あたしが一歩でも動こうもんなら、スーツ男達も一斉に動き始める。

・・・・これから逃げるのなんてマジで無理ゲーじゃない?

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