俺様御曹司は逃がさない
そんな性格が心底嫌になるわ──。


「……分かってる」 

「あ?なんか言ったぁ~?」


おい、ふざけんな。

絶っっ対聞こえているのに、とぼけた顔をしながら“聞こえません”アピールをしてくる九条。


「チッ」


思わず舌打ちをしてしまった。いや、むしろ舌打ちをせずには居られないでしょ、こんなの。 

てか、舌打ちだけで済んでるのが奇跡っていうか褒めてほしいよね。


「お前くらいだよ?俺に舌打ちをする女」


珍獣を見るかのような眼差しを向けられるあたし。そんな目で見ないでいただきたい。あんたの方が遥かに珍獣ですよ。


「で、なんなの?」

「ん?」

「『ん?』じゃなくて!なんなの!?あたしに何を望むわけ?あんたは!」

「あーー……」


あたしをジーッと見つめて、口を閉ざした九条。

・・・・ものすんごく嫌な予感しかしない。


「な、なによ……」

「うーーん。今じゃないかな」

「え?」

「タイミング」

「は?何が?」

「だぁから、今じゃないってこと」


いやいや、意味わかんないって。今じゃない?タイミング?……なんじゃそりゃ。


「……じゃあ、言うこと聞くって話は無かったことにっ……」

「なるわけないっしょ~?時期が来たら迎えに行く」

「はい?」

「そういうことで」

「いや、ちょっと……マジで理解できないんですけど」

「ハハハ~」


・・・・こいつ、説明する気が全くないな。まあ、いいや。このままあたしのことは忘れてくれ、もう関わりたくないし。

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