俺様御曹司は逃がさない
無の感情でスタスタ歩き続けるあたし。

そして、徐々に冷静になっていく頭の中。

・・・・ヤバい……よね?

やりすぎた?やりすぎたかな!?

皆さん、もしかしたらあたし……東京湾に沈められたり、海外へ売り飛ばされたりするかもしれません。

九条のことだから追いかけてくるかな?と思いきや、追いかけて来ることもなかった。それはそれで怖い。

げっそりしながらホームセンターでロウソクを買って、途方に暮れながら帰宅した。


「おかえり、舞」

「ただいま」


電気が止められているというのに、とっても笑顔でお出迎えをしてくれるお母さん。


「ロウソクパーティー久々ね~」

「……あはは。そうだね~」

「おかえり、舞。遅かったね」

「あーー、うん。ごめん」


ルンルンでロウソクを配置しているお母さんと、それを手伝う律。

・・・・母、弟よ……あたしはとんでもない奴を敵に回したかもしれん。ごめんな。


「おお、舞~。おっそいぞ~?父さん舞のことが心配で心配で何も手につかっ……」

「お願いだから黙って。お父さん」


あたしがこう言うとシュンッとして、部屋の端でいじけるお父さん。それを適当に慰めるお母さん。


「舞ちゃん」

「ん?なに?」

「また壁に穴開いたから補修しとけよ~」

「ちょっと慶。それが人に物を頼む態度なの?」

「あーーはいはい。やっといてくださーーい!!」

「……はぁぁ。分かった」


・・・・だいたいあたしは、壁補修職人でも何でもないの。自分でやんなさいよ、まったく。

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