俺様御曹司は逃がさない
どうやら“九条柊弥”という人物は、かなりの有名人らしい。今、SNSで若者を中心に人気が爆発してて、雑誌やらメディアにも活躍の場を広めているとかいないとか?

スマホなんて持ってないし、テレビもろくに見ない、雑誌を買うお金のないあたしが九条を把握していないのは、なんら不思議ではない。

で、ただ者ではないと思っていた九条は、リアルにただ者ではなかった。国内のみならず、海外でも名を馳せている“九条財閥(九条グループ)”の御曹司らしい。軽薄というか、あんなちゃらんぽらんそうな男が御曹司ねえ……。

ていうか、そんなとんでもない男と交渉……『俺の言うことを何でも聞く』なんて怖すぎるでしょ。何をさせられるか分かったもんじゃない。


「舞ちゃん。また来てるよ~?」

「そりゃあ“御曹司様”との関係が気になるでしょ~」

「……はぁぁ」


あの日、九条が学校に来たせいで、あることないこと噂が広まりに広まって、あたしは校内でちょっとした有名人になってしまった。九条ファンがほぼ毎日、あたしを偵察に来る。本当にいい迷惑だわ。


「舞、大丈夫か?何もされてねえ?」


後ろからそう話しかけて来たのは拓人だった。


「何もされたりはしてないけど、まあ……ぶっちゃけダルいよね……」

「俺が追い払って来ようか?」

「いや、いい……。逆撫でしたくない」


卒業間近だし、面倒事は避けたい。


「そっか。何かあったら俺に言えよ」

「あーー、うん。ありがとう」

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