俺様御曹司は逃がさない
ガチャッと車のドアが開いて、後部座席から出てきたのは言うまでもなく──。


「よぉ、久しぶり」


・・・・一生会いたくなかった“九条柊弥”だった。

驚きもしなければ、嬉しくもないし、なんならタイミング悪すぎて最悪だし、何よりマジで会いたくなかった。

無駄に長い脚でズケズケと偉そうに歩いて来る九条。そして、相変わらずのイケメンで、無駄にいい匂いをさせてやがる。

完全に停止状態でただ突っ立っているあたし元へ、不敵な笑みを浮かべながら寄ってきた九条。


「お前、俺になんか言うことあんだろ?」


いえ、何もありません。


「言わなきゃなんないことあんでしょ~」


いえ、微塵もありません。


「なぁにボケーーッとしてんだよ。あ、久しぶりに会う俺があまりにもイケメンすぎて、緊張してるとかぁ?ハハッ、可愛いとこあんじゃ~ん」


ははは。自惚れんな?クズ。


「つーかさ、マジで言うことあんでしょ」


ポケットに手を突っ込んで、あたしを見下すような目で眺めている九条。その見下すような瞳が、あたしの神経を無性に逆撫でる。


「は?別に言うことなんて無いですけど」

「あーー、そういう感じ?」

「なにが?」

「お前さ、誰に手ぇ上げたか分かってる?」


・・・・もしかして……ビンタのこと!?


「いや、あれはそのっ……」

「俺にビンタするとかマジでありえないっしょ」

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