俺様御曹司は逃がさない
俺が『天馬に来い』そう言った瞬間から微動だにしなくなった七瀬。
ま、いくらなんでも“天馬学園”くらいは知ってんだろ。てか、知ってるからこの反応してんのか。
「おーい、聞いてんの~?」
今にも口から魂が抜けそうになっている七瀬に一応声をかけたけど、もはや俺の声も存在もスルーされる始末。本当にこの女面白いわ。
すると、抜けかけていた魂が戻って正気を取り戻したっぽい七瀬。
「あの……本当にごめんなさい。もう許してください」
すべての感情を捨てました的な顔をしながら、俺に頭を下げている。
・・・・おそらく感情を捨てないと、俺に頭を下げるって行為ができなかったんだろうな、癪に障って。分かりやすい女でなりより。
「謝ったって意味ないよ~?もうお前にするって決めたし」
すると、ものすんごく嫌そうな顔をしながら頭を上げて、心底嫌いなものを見るように目を細めて俺を見ている。
俺のことをこんな風に見る女は、間違えなくこいつ以外は居ない……そう断言できる。
だいたい俺に靡かない女なんて今まで居なかった、ただこいつ……七瀬舞を除いてはな。
おかしい、きっとどうかしている、そうに違いない。貧乏すぎて、目も何もかもが貧相になってんだろうな。そのせいだろ、うん。この俺様がこんなぞんざいに扱われるなんて、ありえないっしょ。
「確かに……確かに約束はした……したよ?でも、さすがに度が過ぎてると思う。それに天馬学園って……あたしみたいなパンピーが行ける場所じゃないじゃん」