俺様御曹司は逃がさない
「うん。到底無理だろうねえ」


俺がそう言うと、露骨に顔をひきつらせた七瀬。イラッとしたけど我慢してます的な感じだろうな。


「来いって言われて行ける場所じゃないの、分かる?」

「俺が来いって言ってんだけど~?」

「だからさぁ……あたしにはそんなお金も学力も到底無いって言ってんの!!九条ひとりの権限であたしを入学させる……なんて、そんなこと出来るわけないでしょ!?どうやってっ……」

「できるけど?」

「…………は?」

「だぁから、できるって」


すると、サーーッと血の気が引いて顔色が悪くなっていく七瀬。本当に分かりやすい女だな。マジでウケるんだけど。


「さ、さすがにこんなパンピーを無条件で入学って……そんなこと、できるはずがぁ……」

「俺""は""できちゃうんだなぁ~」


七瀬は真顔で俺を見て、ゆっくり目を瞑りながら額に手を添えて、何やら考えている様子。

ま、何をいくら考えたって現実が変わることはないし、この“運命”から逃れることもできないんだけどね。

俺はやっと手に入れた“最高のおもちゃ”を手離すつもりは毛頭ないし、逃がしはしない。


「九条」

「ん?」

「あたしね、死ぬほど貧乏なの」

「だろうな」

「弟達の為にも働かないといけないの」


『弟達の為にも』……か。それってどうなんかね。自分の人生を犠牲にしてまで、弟達の為にってか?俺にはよう分からん。

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