俺様御曹司は逃がさない
「だから、九条の遊びには付き合いきれない」


俺の目を真っ直ぐ見て、そう言い放った七瀬。

・・・・遊び、遊びねえ……。七瀬のその一言に、何故か無性に腹が立った。


「つーかさ、弟達が~とか言って自分の人生を棒に振るつもり~?生き方ヘタクソすぎね?自分の好きなように生きればっ……」

「何も知らないくせに分かったような口利かないでっ!!あんたに分かるわけないでしょ!?何でも与えられて、何でも手に入って、何不自由なく、気儘に生きて来たあんたに!!」


声を荒げて、苦しいと言わんばかりの表情で俺を睨み付ける七瀬。

別にそんな顔をさせたかったわけじゃない。うつ向いて、強く握り締めた拳と震えている体。

こいつは強い……いや、強がりで俺なんかに意地でも弱みを見せたくないタイプなはずだ。きっと、何かが溢れ出さないよう必死にこらえてんだろうな。

・・・・女が泣こうが喚こうが、別にどうだってよかったし、気にしたことも無かった。 

だが、こいつに泣かれるのは……なんつーか気に入らねえ。


「悪かった」


『悪かった』……そう言った自分に驚くと同時に、七瀬もかなり驚いている様子。目を見開いて、未確認生物でも見るかのような表情で俺を見ている。どうやら涙も引っ込んだようで何より。


「……九条、あんた……謝れるんだね……びっくり」

「はぁぁぁ。だるっ」

「……あの、ごめん。あたしも言いすぎた」

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