俺様御曹司は逃がさない
鼻で笑って、酷く冷めた瞳であたしを見ている。その瞳が怖いと思うと同時に、少しだけ可哀想だなとも思った。

九条の周りにはお金目当てや地位……要は家柄目的で近づいてくる人達が多いってこと。おそらく男女問わず……ね。

でも、それとこれとは話が別だし、ぶっちゃけあたしには関係のない話。


「思考回路が本当にクズだね」

「そりゃどうも~。ちなみにお前の家族を潰すのだって、蟻を潰すのと大差ないよ?あっという間に崩れ落ちておしまい。可愛い弟達を路頭に迷わせるわけには……いかねーよな?」

「……っ、最っ低」

「で?どーすんの?俺の言うことをハイハイって聞いときゃ穏便に済む話なんだけどね」


・・・・分かってる。そんなこと分かってるけど、なんでこんな奴の言うことを聞かなきゃいけないわけ?どう考えても横暴すぎる。

なんでこんな男に目をつけられちゃったの?あたし……。


「『自分の人生棒に振るつもりかよ』とか言ってたくせに……あんたがあたしの人生終わらそうとしてんじゃん」

「あ?お前さ、理解力無さすぎね?こんな好条件な話、そうそうねえぞ普通。お前の終わったも同然だった人生が、華やかで潤った人生になるチャンスをこの俺様が与えてやってるってこと……忘れんな」


──── こいつには逆らえない。


俺様御曹司からは逃げられないって?

ねえ、そういうことなの……?

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