俺様御曹司は逃がさない
『うち、想像を絶するビンボーなんで慰謝料なんて払うお金はありません!!微塵もありません!!』とか言っちゃう?

めちゃくちゃ恥ずかしいし、なんで赤の他人にこんな暴露をしなきゃいけないのか……とか色々思うところはあるけど、致し方ないか。背に腹は代えられん。


「あの、うちっ……」

「気に入った」

「……へ?」

「おぬし、嫁に来い」


──── は?


えーーっと……いやいやいや、何このおじいちゃん。ねえ、ヤバくない!?マジでヤバすぎない!?『おぬし、嫁に来い』って、年の差婚のレベルが異次元に達してるって!!


「いや、今の言い方は少々語弊があったか?」


しまったな~みたいな顔をしながら、絶妙に近付いてくるおじいちゃん。語弊もなにも、本格的にヤバい人だってあたしの本能が危険信号を発令している。


「あははは……。えっと、ははっ……あの、あたし急いでるんっ……」

「ワシの孫の嫁に来い」


──── は?……いや、だから……はぁあんっ!?


・・・・ごめん、おじいちゃん。意味分からんよ、ボケてんの?おじいちゃんの嫁でも、孫の嫁でも、どちらにしろ意味が分かんないよ?それ。


「おぬし、名はっ……」

「ははっ!!いやぁ、お元気そうでなにより!!んじゃっ!!」

「コラッ!!待たんか!!」



この状況で『待て』と言われて待つ馬鹿がどこにいんのよ。

言うまでもなく、あたしは猛ダッシュで逃げた。顔面崩壊なんて恐れずに、ただがむしゃらにダッシュした。

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