俺様御曹司は逃がさない
──── えっと、なんでまだ帰らないの?
時間がないからさっさと契約書を書けってあたしを急かした張本人が、何故か未だに居座ってるんですけど……?
勝手に運んできた荷物を勝手に荷解きして、『これはあれで、あれはこれで~』と適当に説明してくる。
「あの」
「ん?」
「なんで帰らないの?」
「はあ?居ちゃダメなわけ?」
ダメっていうか、もう居て欲しくはないよね。そろそろフラッとお父さん帰って来そうだし、なんなら律達も帰って来る時間になっちゃう。
「『時間がない』って言ってたのあなたですよね?」
「ん~?そんなこと言ったっけ~?」
「契約書書く時に急かしたのはどこの誰でしょう」
「さぁ?し~らない」
とぼけた顔をしてあたしを見てくる九条にイラッとして、無性に殴りたくなるわ。
「面倒なことになる前に帰ってほしいんだけど」
「あ?面倒なことって何?」
「ほら、うちの親が帰って来たりしたら面倒っ……」
「おーい、舞いるかぁ?表に停まってるあの高級車は一体なんだ…………」
あたしの部屋のドアをなんの躊躇もなく開けたお父さん。
シーーンッと沈黙が流れた。
「なんっだこのクソガキてめぇぇーー!!俺の居ぬ間に俺の舞に何してくれとんだボケェェー!!」
鬼の形相で九条に飛びかかろうとするお父さんをなんとか押さえた。
そして、あたしはようやく理解した。