俺様御曹司は逃がさない
慶の喧嘩っ早さは紛れもなくお父さん似だと──。なんならあたしも似たかもしれない、ツラッ。


「ちょっ、お父さんっ!!」

「離せ舞!!俺は許さん!!俺の舞は誰にも渡さん!!」

「何を馬鹿なこと言ってんの!?」


だいたい、ちゃらんぽらん(お父さん)の舞とやらになった覚えもないわっ!!


「お邪魔しています。はじめまして、九条柊弥と申します」


──── 誰だオマエ。


「あぁん?九条柊弥だぁ?名前までイケメンじゃねーか!!」


いや、ズレてるよ……お父さん……。


「イケメンだなんて……七瀬さんのお父様に比べたら、僕なんて大したことありませんよ」


──── うん。誰だ?オマエは。


さっきまでの雰囲気とは一変して、爽やかな笑みを浮かべ、信じれないほどの好青年っぷり。


「お、おう……ま、まあ、俺ほどではないわな~」


・・・・嬉しそうにしているお父さんが単純馬鹿すぎて泣きたい。


「実は僕……以前、七瀬さんに困っているところを助けていただき、どうしてもそのお礼をしたく、ご自宅に伺っていたんです。これ、お口に合うといいのですが……」


そう言いながら高級そうな紙袋に入った何かをお父さんに渡した九条。お父さんはすんなりその紙袋を受け取って中を覗いていた。


「こっ、これはっ!!幻の日本酒じゃねーか!!」

「はい。七瀬さんがお父様は日本酒がお好きだと仰っていたので」

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