俺様御曹司は逃がさない
「おいおい……これ、高いだろ。お前パッと見、高校生くらいにしか見えねぇけど……」

「僕は七瀬さんと同い年です。天馬学園に通っております」

「てっ、天馬学園!?」

「はい。天馬学園です」


すると、目を見開いてあたしをガン見してくるお父さん。そして、ニヤッと悪い笑みを浮かべた。

・・・・ダメだ、ものすんごく嫌な予感しかしない。


「ハッハッハッ。いやぁ、柊弥君!!これからも舞と仲良くしてやってくれ!!ふつつか者だけど、見た目だけは悪くねぇだろ!?」


──── おい。それは娘であるあたしが居る場で言うことなのか?というか、実の娘に対してそんなこと言うか?普通。


「いえ、そんな……。七瀬さんはとても素敵な女性ですよ。僕の方こそ不束者ではありますが、今後ともよろしくお願いします」


──── だから、君は誰なんだい?二重人格……?それとも今までの九条は幻だった?


悪い笑みを浮かべる父、胡散臭い爽やかな笑みを浮かべる九条、感情を失った目で父と九条を傍観するあたし。なんだこのカオスな状況。


「柊弥君、この後の予定は?忙しいか?」

「いえ、特に何もありません」


おいおいおーーい!!時間がないって言ってたのは、どこのだぁーーれ!?


「お父さん、九条は忙しっ……」

「七瀬さん……僕は大丈夫だよ?君は本当に優しいね。気を遣わせてしまって申し訳ない」

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