俺様御曹司は逃がさない
「いいじゃん。減るもんじゃねえんだし~」


で、車に乗れと言わんばかりの圧力をかけられる。


「マスターの言うことは……?」

「……“絶対”……でしょ?サーバントは黙って言うことを聞けって?」

「フッ、そういうこと~」


何もかも諦めて車に乗り込んだ。


──── ていうか、マジで二重人格なんじゃない?


「あんたさ、病気?」

「……はあ?」

「二重人格でしょ」

「なに言ってんの~?意味わかんねえ」


意味分かんないのはこっちですけど。


「あの気持ち悪い好青年っぷりはなんなわけ?」

「お前、俺のこと“気持ち悪い”って思ってんの?」

「うん。それ以外に何があるわけ?」

「うわっ、信じらんねえ」


信じらんないのはこっちなんですけど。

「無駄にあたしの家族と関わろうとするのはやめてくださいませ""マスター""」

「嫌みったらしく言うのやめてくんなぁい?つーか、二重人格じゃないし~。俺はTPO……時と場合、要は使い分けてるってだけ」

「ただの猫かぶりじゃん」

「ハハッ。何とでも言えよ~、庶民のお前には分かんないだろうし~」

「ああ、そうですかーー」


・・・・なーんかモヤモヤすると思ったら、やっぱりおかしい。初めて九条と会った時、なんで猫かぶってなかったんだろう。猫かぶっとけば、あたしも騙されてたかもしれないのにさ。そっちの方が手っ取り早いじゃん?

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