【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
小さな謎が解明されて、胸に溜まっていたモヤモヤが消えた。


町並みといえば、先月お母さんと買い物に行った時、行きつけだったレストランがなくなってて、焼肉屋さんに変わってたな。

6年も離れてたら、閉店したり新しいお店が出来てたりもするよね。



「感じ悪かったよな、ごめん」

「いやそんな! 私こそ鵜呑みにしちゃってごめんね」



顔の前で手を合わせる。


女の人が苦手だとか、紅輝くんみたいに告白された経験があるとか。

気になる点はあるけれど、今はとにかく、嫌われていないってことがわかって一安心。


だって紅耀くんは……。



「小夏っ、自転車」



胸を撫で下ろしたその時、腕を掴まれて引き寄せられた。



「危ねぇな……。運転中くらいスマホしまえよ」



触れられた箇所が熱くなって、トクントクントクンと胸の鼓動が速くなる。



「ごめん、いきなり」

「う、ううんっ! ありがとう」



顔が赤くなるのを感じて急いで距離を取る。


もう誤解は解けた。それなのに、緊張したり、胸がドキドキしてしまうのは。


──多分、彼が初恋の相手だからだ。
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